先進の画像診断
認知症の解明を目指す
- 岡沢 秀彦
- OKAZAWA Hidehiko
- 高エネルギー医学研究センター 教授(生体機能解析学、分子イメージング)
Profile
1961年、長野県生まれ。1996年、京都大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。カナダ?モントリオール脳神経学研究所研究員。1999年、滋賀県立成人病センター専門研究員。2003年1月、福井医科大学高エネルギー医学研究センター助教授、同年10月、福井大学同センター助教授、2006年、同センター教授、2010年、同センター長併任。
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従来、見えなかった病変も診断
高エネルギー医学研究センターは、放射線の平和利用を目的に、画像診断や病気治療の研究に活用する施設です。近年、PET/MRIという画像診断装置を導入し、従来は見えなかった病変やがんの転移も発見できるようになりました。
PET/MRIは、陽電子放出断層撮影(PET)と磁気共鳴(MRI)という、もともと異なる原理の画像撮影を同時に行うもので、2015年の導入時に国内3台目、現在でも十数台しかない最先端の診断装置です。PETは病変部に起こっている異常な働きを検出し、MRIでは体の器官?組織の様子を撮影しますが、PET/MRIでは2つを重ねるので、脳の診断に使うと、詳細な画像により認知症を起こす異常物質の蓄積や脳内環境変化の発見に力を発揮します。
認知症の根本原因に迫る
代表的な認知症、アルツハイマー病では脳にアミロイドベータ(Aβ)、続いてタウタンパク質という物質が異常に蓄積する経過が知られていますが、そのほかに、脳細胞で酸化作用が過剰に起こる酸化ストレスが早期から関わっている可能性が高いという説もあります。現在、PET/MRIを活用して、認知症初期の症例を集め、アミロイド集積や脳内酸化ストレス部位を比較する研究により、認知症発症の仕組みを解明することを目指しています。Aβが原因であることは知られていますが、実は酸化ストレスの蓄積の方が、Aβより上流の原因となっている可能性もあると考えています。そうなると酸化ストレスを防ぐ、新たな認知症予防法や治療法がわかるかもしれません。もう一つの異常物質、タウをめぐってもカナダの大学と共同研究を来年度から行う予定です。タウはアルツハイマー病以外の認知症にも関係します。国際的に多くの症例を究明することにより、さらに認知症の仕組みに迫りたいと思います。
異常物質が睡眠中に排出されるという研究成果を読んだことがあります。いつか、睡眠のコントロールで認知症を治す研究にも取り組んでみたいと夢見ています。
カナダで研究していた頃、モントリオールの名物、ベーグルのおいしさに驚きました。独特のもちもちした食感に豊かな風味でクリームチーズとバターがぴったり。訪問するたびにまとめ買いしてきます。