超小型衛星が
宇宙への夢を現実にする
- 青柳 賢英
- AOYANAGI Yoshihide
- 産学官連携本部 特命准教授(宇宙工学)
Profile
1984年、北海道生まれ。2012年、北海道工業大学大学院応用電子工学専攻博士後期課程修了。2012年から東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻特任研究員、2020年1月から福井大学産学官連携本部特命准教授として着任。
研究者詳細ページ
パソコン並みに組み立てられる
国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」から放出された人工衛星から、ファーストボイスが届く―。人工衛星の開発のなかで、私がもっとも感動する瞬間です。と言っても、特別に“ステキ”なメッセージではなく、バッテリーの残容量や温度などの基本データを最初に受信したのです。
かつて人工衛星は国を挙げて取り組むプロジェクトで重さ数トンにもなりましたが、近年は機器類の小型?高性能化によって、50キロ以下の超小型衛星も、量産されるようになりました。特に1キロ程度の人工衛星は、小さな立方体のような姿からキューブサットと呼ばれています。人工衛星を作るには、宇宙工学の専門知識や多額の資金が必要だと思われがちですが、パソコンの組み立てのように、ネットショップで必要な材料を買ってきて作れるぐらい、ハードルが低くなっています。もちろん、人工衛星で何をするか?は重要ですが、超小型衛星ではそのミッションの策定から、設計、プログラミング、運用までを1人で出来れば、最初から最後まで自分の想いを乗せられます。
分野を問わない挑戦
地球を宇宙から眺める人工衛星だからこそ、地上の比ではない広範囲な観測が可能になります。私は広いエリアの空間情報と分光情報(スペクトル)とを合わせて測定する「ハイパースペクトルカメラ」の開発を行っています。このカメラを使うと、農作物に含まれるクロロフィルなどの成分によって、異なる反射率の差を見分け、品種の判別や生育の観察が全土にわたって可能になります。大型のものが多いのですが、私は親指ぐらいにしようと取り組んでいます。現在、県内企業の技を集結し開発している県民衛星やキューブサットに搭載すれば、地域の農業に貢献できると考えています。
私はこれまで9基の超小型人工衛星を作りましたが、もともとは電子工学が専攻。宇宙は工学系だけではなく、文系もプロジェクトのマネージメントや新規ビジネスなどで参入できる複合分野です。夢やロマンで語られていた宇宙も、今やみなさんの手が届くところにありますよ。
料理を作ることにハマっています。休みの日、思う存分手間暇かけて台所で料理をしながら飲むビールは格別です。それも料理に合わせたクラフトビール。料理とビールのペアリングを探すのも趣味です。(写真は子供と一緒に作ったハロウィンのパエリア)