木村 亮

世界の動きに連なる
地域の歴史

  • 木村 亮
  • KIMURA Ryo
  • 国際地域学部 教授(地域史、地域経済論)

Profile

1957年、北海道生まれ。1987年、東京大学大学院経済学研究科理論経済学経済史学専門課程修了。1987年、福井大学教育学部助教授、1999年、同大教育地域科学部助教授、2004年、同学部教授、2016年、同大国際地域学部教授となる。2018年より国際地域学部長併任。
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「羽二重」はグローバル商品

地域の繊維産業の研究というと、農家の零細な兼業機屋の盛衰や担い手の女性の悲惨な生活などが注目されがちです。ところが、私が取り組んだ福井の絹織物「羽二重」をめぐる研究では、かなり違う視点が浮かび上がりました。羽二重は明治の中頃、盛んになった当初から、欧米のアパレル製品の生地として輸出され、海外市場のニーズに対応することで発展したことがわかったのです。繊維王国、福井の主力製品はその後、人絹(レーヨン)、合成繊維(ナイロン、ポリエステル)へと変わりましたが、実は製織後の精練や染色といった仕上げ加工が海外のニーズに応える決め手でした。それらの技術革新は繊維産業の発展を先導しただけでなく、その後の福井の産業全体をけん引する役割を果たします。今の福井の地域経済の形成されてきた過程が、グローバルな視点、現在から振り返る視点によって明らかになってきたのです。このような複眼的な視点が、地域の歴史の理解を豊かなものにしていくのです。

歴史資料を見極める必要性

ネットの普及と図書館等のデータベースの充実により、ここ十年で資料収集の環境は一変しています。海外の資料も居ながらに検索し、すぐにコピーを取り寄せることができます。最近、第二次大戦末期に県内に開設された連合国軍捕虜の収容所について調べましたが、こうした資料はほぼすべて海外のデータベースや文献から得た、捕虜たちの生の証言です。ただ、生の証言は貴重な資料ではありますが、事実の意図的な誇張や自己弁護、また事後に無意識に刷り込まれた情報の可能性もあり、必ず発言者のバイアスに気をつける必要があります。これは、歴史「小説」を読む場合に、それが作家の想像による創作である点に注意すべきだということと同じです。もちろんネットの情報は簡単に信用しないように。大学で勉強するということは、うそがないか「見極める力」を養うということでもあるのです。

It's My Favorite!

県内の公共温泉巡り。泉質も多彩で実際に入ってみないとわからない。できれば1週間に2回は入りたいなぁ。