手から伝わる愛情を
看護ケアに
- 上原 佳子
- UEHARA Yoshiko
- 医学部 教授(基盤看護学)
Profile
1969年、福井県生まれ。2017年、大阪大学大学院 大阪大学?金沢大学?浜松医科大学?千葉大学?福井大学連合小児発達学研究科博士課程修了。1992年、千葉大学看護学部卒業後、看護師および企業保健師として勤務。1997年、東京慈恵会医科大学医学部看護学科助手。2000年、福井医科大学医学部(現福井大学医学部)看護学科助手。2007年、福井大学医学部看護学科助教。2008年、同講師。2011年、同准教授。2021年より現職。
研究者詳細ページ
手で触れる意味
子どもの頃お腹が痛くなった時、お母さんがなでてくれると痛みが和らいだ経験はありませんか。それはきっと、気のせいではありません。科学的に痛みの神経伝達や不安などが緩和されることが実証されつつあり、国内でも認知症など様々な療養現場で緩和ケアの試みとして広がっています。私はそれらのケアのひとつ、スウェーデン発祥のタクティール?マッサージを研究しています。
タクティール?マッサージは、1960年代に未熟児のケアをしていたスウェーデンの看護師によって考案されました。手で相手の背中や手足を「押す」のではなく、やわらかく包み込むように触れるマッサージを10分程度行うものです。タクティール?マッサージは、肌に触れられることが引き金となり、脳の視床下部から血液中に「オキシトシン」が分泌されると考えられています。オキシトシンは心地よさなど多幸感をもたらす働きがあります。同時にストレスに関わるホルモンのひとつ「コルチゾール」の減少も起きることがわかってきています。
私の研究の軸は、これらの仕組みの検証です。2017、18年には健康な成人女性20名に対してタクティール?マッサージを20分間施術し、唾液の採取、心拍数の測定、不安状態を測定する心理検査を行う臨床試験をしました。その結果、被験者の唾液の中のコルチゾールが低下し、自律神経の活性度の増加、不安の指標が減少するなど有意なデータが得られました。
手から癒しを伝える
看護の「看」の字は、「手」と「目」からできています。看護師はこの両方を駆使してケアを行います。医療の高度化により、器械の管理や薬剤の投与など診療の補助に看護が傾きがちです。どのような状況でも看護師の手を使って患者さんのケアをしたい。医療の現場で看護ケアを行うためには、科学的検証は欠かせません。
ご家族で、病気を患っている方はいませんか。優しく手に触れ、笑顔で接してみてください。あなたの手から愛情が伝わり、病気に対する恐れや不安が少しでも解消されるかもしれません。
※タクティール?は、株式会社日本スウェーデン福祉研究所(JSCI)の登録商標です。
趣味は映画鑑賞です。レイトショーなどよく見ています。