宮田 真衣

見えないものに
支配される生物

  • 宮田 真衣
  • MIYATA Mai
  • 工学部 助教(応用昆虫学、進化生物学)

Profile

1992年、埼玉県出身。2018年3月、千葉大学大学院 園芸学研究科 環境園芸学専攻 博士前期課程修了。2021年3月、千葉大学大学院 園芸学研究科 環境園芸学専攻 博士後期課程修了 博士(学術)取得。2021年3月、千葉大学大学院 園芸学研究科 博士研究員を経て、2021年10月、福井大学に着任し現在に至る。
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蝶がメス化する現象を追う

 ……このバクテリアに感染したら、女しか生き残れない……。少し怖くなるような話ですが、実際、昆虫などでは「ボルバキア」というバクテリアに感染することでメスしか生まれなくなったり、オスのみが死んでしまったりして、代を重ねることでメスばかりの集団になっていく現象があるのです。私の研究対象は、南西諸島などに生息するキチョウという蝶で進行している「ボルバキア感染によるメス化」とよばれる現象です。
 ボルバキアが昆虫に感染して性を操作していることが20世紀末ごろに発見され、実験室レベルでは様々な種で確認されています。また、報告例はわずかですが、オスを殺すボルバキアに感染している集団は非感染集団よりメスの割合が高いことが野外でも観察されています。ただ、自然界において性比がメスに偏る過程が時系列に沿って実証されたことはまだありません。私はそこを目指し、沖縄県の島でチョウの採集を定期的に行ない、感染率や性比などの変化を調査しています。この結果、リアルタイムで集団のメス化が進む様子を数値として示せるのではないかと考えています。

 

南西諸島などに生息するキチョウ

いつか何かの役に

 生物集団の生殖が、バクテリアの感染という目に見えないことからコントロールされるというのは、ものすごく面白い研究テーマです。でも、何の役に立つのかって?たとえばキチョウのようなチョウ目の昆虫には、農業で問題となる重要害虫が存在することが数多く知られています。害虫に対してバクテリア感染による生殖の制御が可能になれば、農薬を使わない駆除ができるかもしれない。そんな大きな可能性も秘めています。
 子どものころから生きものが好きで、触って観察して遊んでいました。今の研究はボルバキアのような寄生者が宿主の進化を駆動しているのではないかといった仮説を検証することにもつながるため、進化生物学の視点からも重要なテーマです。実利面でも学術面でもとても面白い。これから研究を志し、幅広い興味を持ちたい人に是非オススメしたいですね。

It's My Favorite!

生き物が大好きで、研究で調査?収集の合間に、現地の生き物を観察して楽しんでいます。