芸術教育は何を育むのか
- 小笠原 文
- OGASAWARA Fumi
- 教育学部 准教授(美術教育)
Profile
1969年、北海道生まれ。1995年3月、東京造形大学造形学部美術学科彫刻専攻卒業。1999年6月、パリ国立高等美術学校マルチメディア科修了。2019年3月、広島大学 教育学研究科教育人間学専攻博士課程修了。2010年4月から2022年3月、広島文化学園大学学芸学部子ども学科勤務を経て、2022年4月より現職。
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仏の“学校参与アーティスト”
フランスは「芸術大国」と呼ばれています。それは著名な芸術家を数多く輩出しているから、だけではありません。長い年月をかけてさまざまな芸術が人々の生活の一部となっていて、国をあげてそれを後押しする教育?文化政策を推進していることが大きな要因だと思います。
私はフランスに留学中、空間に合わせてオブジェを配置し作品を作るインスタレーション作家として活動する傍ら、この国独自の制度「学校参与アーティスト」として芸術教育に関わっていました。プロのアーティストが教育現場に入って芸術活動をする制度で、日本の学校で行われる「出前授業」に少し似ていますが、学校参与アーティストは長期にわたって子どもと関わり、時には校内にアトリエをもちながら、創作活動をします。子どもたちはプロと一緒に活動する中で、創作の楽しさ、「お祭り騒ぎ」的な部分、一方で地味な作業の退屈さ、感性の違いなどからくる理解のしづらさ……といった芸術の多面性を実体験します。この私自身の経験と、フランスの芸術教育に関する研究を起点として、日本の芸術教育の在り方を模索していきたいと考えています。
表現の喜びも葛藤もあるのが、豊かさ
日本の大学では、美術の演習中、作品を見せて「これでいいですか?」と伺いを立ててくる、あるいは「ここを切ってもいいですか?」と許可を求めてくる学生がいます。創作や表現に正解がある、と考えられているのでしょうか。日本の芸術教育は、活動を通した情操や感性の育成が目的となっていて、芸術活動を手段として扱っています。フランスのように芸術活動を通して全人的な自主性や生活のあらゆる場面に生きる感性を涵養できないか、そうした教育の場を増やしていきたいと思っています。
子どもたちは大人の鏡です。教員が楽しくないと思っているとすぐに伝わってしまいます。学生には積極的に芸術そのものに触れ、子どもたちに表現する喜びや葛藤などを贈ることができるそんな教員を目指して欲しいですね。
パリで食べるベトナム料理が絶品です!一番のお気に入りはフォーです。