「要配慮者」に
安全?安心な建築とは
- 裵 敏廷
- Bae Minjung
- 工学部 助教(建築計画)
Profile
1983年、韓国?ソウル市出身。2012年3月、弘益大学校建築学専攻博士前期課程修了。2015年に来日し、2019年9月、首都大学東京(現?東京都立大学)大学院都市環境科学研究科建築学域博士後期課程修了。2021年から現職。
研究者詳細ページ
施設の現場からデータを
私は、体の不自由な人や高齢者が安全で安心な生活を送れる施設には、建築の面からどのような条件が必要なのかを探っています。
実は、現在の日本の法律では、要配慮者の施設について総床面積や医療?介護スタッフの人数の基準はあっても、居室の望ましい構成や1人当たりどれだけの面積が必要かといった、入所者の生活に関わる基準はないのです。研究では、ある障がい児施設を季節毎に訪問し、入所者の障がいの程度、家具の形状の実測値といった基礎データをチェックし、15分毎に医療?介護スタッフ?入所児?家族らの行動内容、位置をプロットして、それらの人の動線、関係性をまとめました。膨大なデータが得られ、重症度別にユニットを設けた構成、個室だけでなく複数人が暮らす「個室的多床室」の設置、交流空間の充実―といった、施設計画の有用性を実証することができました。
身近な人の苦労 目の当たりに
私がこの研究を始めたきっかけは、親戚に障がい児がいたこと。当時の韓国は、特別支援学校や福祉施設の環境が整っておらず、国外で療育が必要になったり、家族が他の兄弟の育児に時間が割けなかったりと、苦労を目の当たりにしました。施設に何が足りず、療育する家族にどのような支援が必要か。民間企業への就職後も向き合いたい気持ちは変わらず、先進事例の多い日本の大学院に進学しました。
地域毎に気候が大きく異なる日本は、施設計画のヒントが詰まったフィールドです。少ない日照時間でも明るさを取り込める開放的で大きな窓は、台風の多い地域には不向きなように、最適な施設も多種多様。このような貴重なフィールドで、学生にはあらゆる施設の現場に足を運び、どのような課題を研究成果に反映するか、実践的な学びを将来に生かしてほしいですね。
韓国にいたときから現在も動物保護活動をしています。将来的に動物の福祉施設に関する研究もできたらと考えています。