高齢者の転倒を防ぎ、豊かな生活を支える
- 教育学部(健康科学、老年学)
- 山田 孝禎 先生
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実は怖い転倒のリスク
皆さんは転んで痛い思いをしたことがありますか? 転倒は誰にでも起こりうるものです。若い皆さんが転んでも、重大な事故には繋がりにくいですが、高齢になると、転倒がけがや骨折の原因になるだけでなく、入院や介護が必要となったり、寝たきり状態になるリスクを飛躍的に高める原因となり、超高齢社会の日本において、大きな問題となっています。実は、65歳以上の約20%が年間1回以上の転倒を経験しているといわれています。
私は、転倒に関連した身体機能を明らかにし、高齢者の転倒を予防する研究を行っています。
転倒を防ぐために必要な機能
6年ほど前から地域の転倒予防教室や介護予防教室に参加し、高齢者の体力測定を行っています。延べ約1000名の方々のデータを蓄積してきました。
転倒しやすい人の特徴として、一般的に、足の筋力やバランス能力が低いことが挙げられますが、私が接している高齢者の方々は、自身の健康に関心が高いためか、それらに顕著な低下は認められませんでした。しかし、それでも一定数の方が年間1回以上の転倒を経験していました。
原因を明らかにするため、データを分析していくと、転倒しやすい人とそうでない人には、躓いたりふらついても素早くとっさに一歩踏み出し踏ん張る力など、転倒を回避する能力に差があることがわかりました。転倒を効果的に予防するためには、まず対象者の筋力やバランス能力、敏捷性などを総合的に把握し、段階に合ったトレーニングを行う必要があるのです。
私は、教室に参加した高齢者の方々に、自身の身体機能をチャート図などを使って出来るだけ詳細に理解して頂くとともに、転倒を防止するために鍛えておきたい機能のトレーニング方法を紹介し、健康な生活を末永く続けるためのお手伝いをしています。例えば、敏捷性が低い方には、ラダーという縄ばしごのような器具を地面に敷いて、その枠の中や外を素早くステップするトレーニング方法を紹介するなど、教室に参加した高齢者の方々と一緒にトレーニングしています。
自分にとって厳しい選択を
今回紹介した研究は、博士前期課程の頃から継続して続けているものです。これ以外にもアミノ酸の摂取と運動中の脂肪燃焼?運動パフォーマンス改善との関係や、生活習慣と体力の関係等々、幅広く手がけています。ヒトの動きやそれが生じるメカニズムを「探る」ことは、研究する上で必要不可欠な作業ですが、運動を教える側に立つ教員養成系の学生の皆さんにおいてもとても重要なことだと感じています。「探る」ということはとても根気のいる作業です。高いレベルで、自らの興味、関心、意欲を保たなければいけないので、自分との戦いであったりもします。私も決して自分に強くはないので、偉そうなことは言えませんが…。なので私は、敢えて自らやらざるを得ない状況を作ってしまうようにしています。かっこ良く言うと、「自分に厳しい選択をする」ということでしょうか。大学生活は、いろんな意味で自由が利く分、誘惑も多いです。私と一緒に厳しい選択をしませんか。
今ハマっていること★
トレーニングです。煮詰まった時や眠くなったときは、トレーニング機器で体を動かし、フレッシュな血液を頭に流しています。訪ねてくる学生とトレーニングしながらいろいろ話をしたり、打合せをしたりもします。スポーツって素晴らしい!