大学院工学研究科博士前期課程 繊維先端工学専攻 1年
永濱 寿章さん
次世代の素材として、エアロゲルが注目されています。エアロゲルは、ゼリーの形を保ったまま、中の水分が気体に置き換わって多孔質になった素材の仲間です。断熱性に優れ、軽いのが特徴で、スペースシャトルの断熱材などに使われてきました。近年、持続可能社会の実現を目指すエネルギ―削減の観点から産業インフラや、一般消費者向けの省エネ材料として期待されています。
これまで開発されてきた主なエアロゲル素材には、シリカを材料とした無機エアロゲルとセルロースを使った有機エアロゲルがあります。しかし、いずれも、もろかったり燃えやすかったりといった課題を抱えています。
私は、高強度で耐熱性?難燃性に優れたパラアラミド繊維を原料に用いる研究に取り組んでいて、従来の欠点の克服が期待されます。さらに、高い柔軟性や機能性を付与するため、エアロゲルの繊維化に取り組んでいます。今回は、エアロゲルを作り出す超臨界乾燥技術に湿式紡糸技術を組み合わせて、パラアラミドゲル繊維を作り出すことに成功し、その構造および物性を明らかにした研究成果が評価され、日本繊維機械学会第72回年次大会で学術奨励賞を受賞しました。
指導教員の廣垣和正准教授には、「何をどのように変化させたら、結果にどのように影響を及ぼすのか、また何故そのような現象が起きるのか、それを考えながら実験に取り組みなさい」と常々言われてきました。本研究においても、思うような結果が出ず苦しい時期もありましたが、実験結果に対して何故なのかという疑問を常に持ち、根気強く挑戦し続けることで研究を進めることができました。今後もこの精神を忘れずに何事にも挑戦していきたいと思います。
最後に、どんな時も熱心にご指導いただきました廣垣准教授、日頃から様々な面で支えてくれた研究室のメンバーに深く感謝したいと思います。